CaseStudy:16 つくばを拠点に全国でアート活動を展開
多くの人たちとの交流が作品づくりの原動力

アーティスト・絵本作家 小中 大地

「ゴブリン誕生は大学3年生の時」

「ゴブリン博士」の愛称で知られる、つくば市在住のアーティスト・小中大地(こなか だいち)さん。現在、筑波大学大学院(博士後期課程)に籍を置きながらアート活動を続けている。小中さんの展開する「ゴブリンプロジェクト」は『森羅万象に宿る妖精《ゴブリン》を提唱して様々な場に入り、人々とともにつくる』がコンセプト。身の回りの色々なものに目や鼻や口などを付けて生き物に見立てる、親しみやすいアート作品だ。手のひらサイズの小さなゴブリン作品から建物や自然をつかった大きなものまで、その作品は多種多様である。

「ゴブリン」という名前が最初に使われたのは、筑波大学3年時の作品「ガッコーゴブリン」の時。この作品は友部町立(現・笠間市立)友部小学校に展示されたが、高い評価を受け、テレビ局にも取材された。「子どもから、おじさん、おばさん、お年寄りまで、自分の作品を見て喜んでいる姿を目にできることが初体験でした」と小中さん。その頃まではデザイン会社などへの就職もイメージしていたが、作品が評価されたことがきっかけとなり、次第にアート活動に意識が向くようになっていく。作品づくりに一人悪戦苦闘する日々もあったが、作品づくりに様々な人が関わることの大切さを実感し、現在のゴブリンプロジェクトが形づくられていった。

「ガッコーゴブリン」、友部町立(当時)友部小学校/茨城県友部町(現・笠間市)、2005

「ゴブリン博士の病院ゴブリン」、筑波大学附属病院/茨城県つくば市、2009

「雲南ゴブリンプロジェクト~塩田ゴブリン2010~」、雲南市立塩田小学校(当時)ほか/島根県雲南市、2010

「人と人とをつなげるアート活動、県内各地、全国で展開中」

2009年に実施されたプロジェクト「ゴブリン博士の病院ゴブリン」は、小中さんにとって大きな転機になった活動だ。筑波大学附属病院を舞台に、立体造形、コミュニケーション、インスタレーションを組み合わせた滞在型制作プロジェクトで、無機質に見えがちな病院のイメージに変化をもたらした個性的な活動だった。

このプロジェクトがきっかけとなり、同病院の小児病棟で月に数回、定期的なワークショップが行われるようになった。「ゴブリン作品の制作をとおして、例えば参加者同士の関係をより良いものにしていく、それも活動の目的です」と小中さん。例えば親子の参加者でも、アートを介した協働作業をすることによって、普段とは違う新鮮な会話が生まれたりする。このように作品づくりをとおして人と人とが関わり合うことから、このプロジェクトの価値が生まれると小中さんは言う。作品づくりをとおして関わる、場所や世代を越えたたくさんの人たちとの交流。そこから得られる感動が彼の創作活動の原動力になっている。

「人と人とのつながり」を大切にする彼の考え方に共鳴する人の存在によって、活動範囲も広がっている。その一例が、龍ケ崎市市民交流プラザで行うワークショップだ。同プラザの職員が小中さんの活動を知り、市民協働を推進する龍ケ崎市の理念にも相通じると考え、協力を依頼。開館時につづき一周年の時にもワークショップを行うことになった。ワークショップと併せて、施設の看板の絵を依頼されるなど、継続的な関係に繋がっている。同プラザのキャラクターである、えのきの木から生まれた妖精「えのきん」もこの活動の中から生み出された。

現在、小中さんのアート活動は茨城県に留まらず、島根県雲南市、岐阜県大野郡白川村、岩手県遠野市、イギリスなど県外各地に広がっている。参加する人は同じ土地の仲間だったり、親子だったりと、それぞれに違いはあるが、いずれも人と人とのつながりを大切にしたアート活動である点は共通。交流の中で生まれる感動が多くの人を惹き付けている。

「えのきの木から生まれた妖精「えのきん」をつくろう!」、龍ケ崎市市民交流プラザ/茨城県龍ケ崎市、2016

「世界遺産アートプロジェクト 合掌ゴブリンをつくろう!!」、白川村合掌造り集落/岐阜県大野郡白川村、2015

「ゴブリンズ・エブリウェア!」、ノーフォーク・アンド・ノーリッチ大学附属病院/イギリス・ノーリッチ、2014

「つくばで暮らしてきたかけがえのない時間」

筑波大学大学院(博士後期課程)に籍を置く小中さんは、アーティストでありながら研究者の顔も持つ。これまでの活動から見えてきたことを論文としてまとめることで、同様の活動を行う人たちの一助となることを目指している。そんな彼にとってつくば市とはどのような場所なのだろうか。「普段からアート活動や研究を進めるための時間が足りないと感じています」と小中さん。こうした忙しい日々を送るなかにあっても、中華料理店の「大成軒 学園店」や定食の「夢屋」など、行きつけの飲食店はいくつかあって、食事とともに店員さんとの会話を楽しんでいる。また、学園都市というイメージの強いつくばだが、大通りを一歩入るとのどかな田んぼが広がっているなど、気持ちをリセットできて落ち着く場所があることも気に入っているとのこと。

「つくばで暮らしてきた時間はかけがえのない時間です。ここじゃなければだめだったということが、あったかもしれませんね」と小中さん。最も長く暮らした土地であり、ゴブリンプロジェクトという彼のアート活動のルーツとなったつくば市や茨城県に深い愛着を持っているそうだ。今後も彼の作品づくりをとおしてどのような交流がこの地から生まれていくのか、楽しみにしていきたい。

筑波メディカルセンター病院で開催中の「あふれる気持ちゴブリン展」。タイトルそのままに、ハートに様々な気持ちがあふれる。

「龍ケ崎市市民交流プラザ」で行われたワークショップで子どもたちと交流する小中さん。交流の中に感動があり、作品づくりの原動力になるという。

龍ケ崎の子どもたちによって作られた「えのきん」作品。手近な物に目や鼻や口を付けることによって楽しい作品が誕生する。

2012年、つくば市北条地区の竜巻災害時には、ガレキのかけらから「竜の子ゴブリン」を制作した。地域の人々と共につくった作品は、現在も北条ふれあい館に展示されている。

小中 大地(こなか・だいち)プロフィール

1984生まれ、幼い頃は石川県、高校生までは山口県で過ごし、大学進学時に茨城県へ。自身の作品から「ゴブリン博士」の愛称で知られる、つくば市在住のアーティスト。また絵本作家。過去の作品・活動に「ガッコーゴブリン」(友部町立〔当時〕友部小学校/茨城県友部町〔現・笠間市〕、2005)、「ゴブリン博士の病院ゴブリン」(筑波大学附属病院/茨城県つくば市、2009)など。絵本に「ブタオの こんにちは」(チャイルド本社、2010)など。筑波大学大学院(博士後期課程)在学中。

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