CaseStudy:15 東京やフランスの名店で修行後、茨城へUターン
食材に恵まれた茨城県結城市で洋菓子店を開業

アルチザン・パティシエ・イタバシ オーナーシェフ 板橋 恒久
東京→2006年茨城

「東京とフランスで修行を重ねて一流のパティシエに」

茨城県下館市で生まれ育った板橋恒久(いたばし つねひさ)さん。大学卒業後に料理人を目指すも、修業先のフランスで出会った本場のチョコレートのおいしさに感動し、菓子職人であるパティシエに転向。フランスの高級ホテルや一流レストランで腕を磨いてきた。

日本へ帰国し、1991年からは当時東京・恵比寿にあった「Q.E.D.パティスリー」の製菓長を任された。パティシエとして確かな腕前を持ち、評価されてきた板橋さんだが「長男なので、いつかは故郷へ帰ろうという思いがあった。田舎で暮らす両親をほおっておけなかった」と当時を振り返る。

「45歳で独立、故郷の茨城に自店をオープン」

45歳の時に独立を決意。故郷の茨城へ帰った板橋さんは、2006年に自分の店「アルチザン・パティシエ・イタバシ」を茨城県結城市にオープンさせた。実家は米農家だったが、板橋さんのこれまでのがんばりを知る両親は独立を応援してくれた。当初は居抜き物件を探していたが、希望の店舗が見つからなかったため、新築することを決意。都内と比べて土地の賃料が安く、新築のハードルが低いのは、田舎で店を始めるメリットのひとつと言えるだろう。

こうして完成した三角屋根の可愛らしい外観を持つ板橋さんの店。現在の場所を選んだ理由のひとつが、緑豊かな周辺の景色が気に入ったこと。この恵まれた環境を活かして、店内でスイーツを味わうことができるカフェスペースは全面ガラス張りにした。「お客様にも森が見える周りの景色を楽しんでほしかった」と板橋さん。また、お菓子を作るラボはオープンキッチンになっており、お客様だけでなく板橋さん自身もお菓子を作りながら外の景色を楽しむことができる。

「『田舎は宝の山』地元食材にとことんこだわる板橋さんのスイーツ」

「アルチザン・パティシエ・イタバシ」には、その評判を知り遠方から訪れる人が少なくない。根強い人気の秘密は素材に妥協しないところ。例えば看板商品のひとつ、モンブランに使っているのは結城市内で採れる新鮮な栗。4年ほど前に知り合った栗農家の小松三男さん・玉恵さん夫妻が直接届けてくれる。また、近所の農産物直売所へ行けば、たくさんの地元産新鮮野菜が並べられている。「田舎は宝の山です」と板橋さん。店の近くでお菓子作りのための新鮮な食材をかんたんに手に入れられることは、この地で店を続ける大きな理由の一つとなっている。

「結城は本当に良いものがたくさんありますよね」と板橋さんは続ける。かつては城下町として栄え、ユネスコ無形文化遺産「結城紬」で名高い結城市には、食の分野でも「蔵本小田屋」の醤油、「秋葉糀味噌醸造」の味噌、「武勇」の日本酒など、全国的にも評価が高く、多くのファンを持つ逸品が多い。「おいしいものは伝わる」と話す板橋さんの店も、そんな結城市の名店の仲間入りを果たしたようだ。

茨城県結城市で栗農家を営む小松三男さん。畑では7種類ほどの栗を栽培している。店で使っている栗は小松さんの栗畑から提供されたもの。

新鮮な生の栗から作る自慢のモンブラン。手間ひまがかかりすぎるので採算をとるのが難しいが、おいしさにこだわる板橋さんだからこそ作れるケーキ。

農産物直売所の「ファーマーズマーケットきらいち結城店」では地元産の新鮮野菜が並ぶ。こんな店が近所にあることも田舎暮らしの魅力のひとつ。

結城市内に店を構える創業寛政元年「蔵本小田屋」の醤油。東京の有名日本料理店で使われるなど、その味の評価は高い。

板橋 恒久(いたばし・つねひさ)プロフィール

1960年 茨城県下館市生まれ。元料理人で、フランスで修行中にパティシエに転向。フランスパリの高級ホテル「オテル・ド・クリヨン」やフランスの超有名レストラン「トロワグロ」で研鑽を積み、日本に帰国。91年より「Q.E.D.パティスリー」(東京都渋谷区)で製菓長を務める。2006年に自店を茨城県結城市に開業。

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